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2011/12/09” タグの投稿

[HTML Format]:レッドスプライト レッドスプライト、2004年7月GHCC撮影 レッドスプライトは、雷雲

[2011/12/09 14:23:40]: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88

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レッドスプライト

レッドスプライト、2004年7月GHCC撮影
レッドスプライトは、雷雲上の中間圏で起こる発光現象であり、単に「スプライト」とも呼ばれる(以下「スプライト」と書く)。中間圏発光現象の1つである。
雷とは全く別の発光現象ではあるが、雷(雷放電)に付随して発光するといわれている。
近年衛星(ROCSAT-2衛星搭載のISUAL観測器等)からの観測も行われている。
目次 [非表示]
1 概要
2 スプライトの研究機関・研究者
3 他の言語の記述
4 参考文献
5 関連項目
6 外部リンク
概要 [編集]

スプライトは、アメリカのFranzらが1989年に夜間ビデオカメラの較正をしていた時に偶然に撮影してしまった発光現象である。その色 (red) と妖精 (sprite) のようにひょっこり姿を現すことから、「レッドスプライト」と呼ばれるようになった。しかし、理論としてはチャールズ・ウィルソンが提唱していたが、当時はカメラも高性能ではなく、たとえ目撃しても目の錯覚だといわれていた。
Franzらの発見後、様々な科学者により盛んに研究され、実像が明らかになりつつある。色は赤色で、高度約50~80kmで発光し、鉛直方向の大きさは20km程度、水平方向の大きさは数km~70km程度である。スペクトル解析によると、窒素分子のfirst positive bandが支配的であることから、窒素分子がその発光に寄与していることが分かった。
スプライトの種類はいくつかあり、未発見の種類もあるかもしれない。
キャロットスプライト
カラム状スプライト
妖精型スプライト(日本語訳では妖精型妖精となるが、より形状が妖精のようだったためこう名付けられた)
また、場所によって出やすい種類もあるようで、太平洋沖ではキャロットが、日本海側ではカラム状及び妖精型が出やすいといわれている。
雷雲からの放電現象としては雷が一般的に広く知られているが、従来より雷雲から上方に何らかの形で放電や電流が流れているのではないかということが専門家からは示唆されていた。スプライトの発見がこれほど近年まで発見されなかったのは、雷雲上の現象であることから雷雲の真下からでは観測不可能なことや、その発光自体が長くても100ミリ秒程度で人間の目が追いつかなかったということや、カメラで捉えるにしても高感度である必要があったからではないかと思われる。
近年、日本では科学者だけでなく、アマチュアや高校生も数万円程度の比較的安価なビデオカメラ等を用いてスプライトの撮影を活発に行っており、専門家も発見していない特性をも明らかにしている。特に高校生は高校生天体観測ネットワークが研究テーマにし、冷却CCDカメラといった機材を貸し出したり、観測するためのマニュアルを発行したりして新発見に力を入れていた。
スプライトの研究機関・研究者 [編集]

日本
早川正士(はやかわまさし):電気通信大学
福西浩(ふくにしひろし):東北大学
山本真行(やまもとまさゆき):高知工科大学
高校生
愛知県立一宮高等学校
千葉県立東葛飾高等学校
静岡県立磐田南高等学校
高知県立高知小津高等学校
海外
STAR LAB
NASA
NSPO
他の言語の記述 [編集]

lightning (en)


[HTML Format]:オーロラと低緯度オーロラの解説 塩川和夫(名古屋大学太陽地球環境研究所)  目次

[2011/12/09 13:28:05]: http://stdb2.stelab.nagoya-u.ac.jp/member/shiokawa/aurora_kaisetu.htm

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オーロラと低緯度オーロラの解説

塩川和夫(名古屋大学太陽地球環境研究所)

目次
1.オーロラの解説
1.1.オーロラはどうして光るの?
1.2.オーロラにはどうしていろいろな色があるの?
1.3.オーロラの高さはどれくらい?
1.4.オーロラの高さと色の関係は?
1.5.オーロラを光らせる降り込み電子はどこから来るの?
2.低緯度オーロラの解説
2.1.低緯度オーロラってなに?
2.2.なぜ日本のような低緯度でもオーロラが見えるの?
2.3.赤い低緯度オーロラはどうしてできるの?
2.3.1.SARアーク
2.3.2.Broadband Electrons
2.4.低緯度オーロラを観測する機械

1.オーロラの解説

1.1.オーロラはどうして光るの?
 オーロラで光っているのは大気(空気)です。ではなぜ空気が光るか、と言うと、宇宙からやってきたプラズマと呼ばれる電子や陽子(おもに電子)が空気にぶつかるからです。もう少し詳しく書くと、図1.1のようになります。空気を構成している窒素分子や酸素分子、酸素原子は、原子核とその周りをまわる電子から構成されています。宇宙からやってきた高エネルギーの電子が、この空気分子の電子と衝突し、空気分子の電子にエネルギーを与えることによって、空気分子の電子は、これまでの軌道より外側をまわるようになります(励起状態と言います)。この状態は空気分子にとって不安定なので、時間がたつと自然に元の軌道に戻ります。このとき、2つの軌道のエネルギーの差の分だけ、光を出すのです。

図1.1:オーロラが光を出すメカニズム。宇宙から飛んできた電子にたたかれることによって、空気が光を出している。

1.2.オーロラにはどうしていろいろな色があるの?

 電子の励起状態と戻った状態の2つの軌道のエネルギー差の分だけ、光が出ますが、このエネルギー差は出てくる光の強さではなく色に対応します。エネルギー差が大きいと青色、中くらいだと緑色、エネルギー差が小さいと赤色、になります。量子力学によって、電子がとることができる軌道のエネルギーは厳密に決まっていて、どのエネルギーでもとるわけではありません。このため、オーロラは、虹のようにすべての7色が出るわけではなく、数多くの決まった色(輝線と言います)の組み合わせで光っています。

図1.2:オーロラの光の色は、励起状態(上の軌道)から落ちる状態(下の軌道)の間のエネルギー差によって決まります。

1.3.オーロラの高さはどれくらい?

 オーロラは高さ90kmから600kmくらいのところで光ります。もっとも良く光るのは100-300kmです。世界で一番高い山エベレストが約8km、飛行機は約10kmの高さを飛ぶので、オーロラはそれよりもはるかに高いところで光っています。スペースシャトルは400kmくらいの高さを飛んでいて、まさにオーロラと同じ高さです。

図1.3:オーロラの高さ。

 地球の半径は6378kmですから、オーロラは地球の大きさに比べればはるかに小さく、まだまだ地球の表面に張り付いたような構造だ、と言えるでしょう。これは、オーロラを光らせている地球の大気(空気)が、地球の表面のすぐ近くにしか存在しないためです。

1.4.オーロラの高さと色の関係は?

 宇宙空間から地球に降り込んできた電子は、地球の大気にぶつかると、オーロラを光らせながらエネルギーを失っていきます。大気は高さが低くなるほど密度が濃くなっていくので、降り込み電子は、そのエネルギーが高いほどより低い高さまで入ってきて明るいオーロラを光らせることができます。この様子を、オーロラの代表的な発光輝線である赤色(波長630.0nm)、緑色(波長557.7nm)、青色(波長427.8nm)の3つの輝線で解説してみましょう。

赤色(波長630.0nm):降り込み電子のエネルギーが低い(100電子ボルト程度:1電子ボルトは1ボルトの電圧で加速された電子のエネルギー)時はオーロラの色は赤くなります。この赤色は高さ150km以上で、酸素原子が励起されて光っているものです。この高さでは、大気の成分はほとんどが酸素原子なのです。赤色を光らせる酸素原子の励起状態は、非常に励起されやすい(励起するためのエネルギーが低い)ので、低エネルギーの降り込み電子でも簡単に励起されてオーロラが光ります。

緑色(波長557.7nm):降り込み電子のエネルギーが高い(1000電子ボルト程度)の時には、緑色のオーロラがよく光ります。これは、高さ100-200kmくらいで、赤色と同様に酸素原子が励起されて光っているのです。この高さでは、低い高さほど酸素原子の密度が高いので、緑色のオーロラは明るくなります。
前述した赤色のオーロラに関しては、酸素原子が励起されて電子が外側の軌道を回り始めてから、光を出すまでに非常に時間がかかります(約100秒)。低い高さでは大気の密度が濃くなり、時間をかけて光を出す前に、他の大気分子と衝突してエネルギーを失ってしまうので、赤色は低い高さ(エネルギーの高い電子の降り込み)では光りにくいのです。緑色を光らせる酸素原子の励起状態から光までの時間は約1秒で、このために低い高さでも光を出すことができます。

青色(波長427.8nm):降り込み電子のエネルギーがもっと高い(10000電子ボルト程度)の時には、青いオーロラが光ります。これは、高さが90-120kmくらいで、窒素分子のイオンが励起されて光っているのです。このぐらいの低い高さになってくると、酸素原子の密度は減り、代わりに、地上と同じように窒素分子が大気の主成分を占めるようになります。この窒素分子が励起されてから光を出すまでの時間は0.000001秒以下と非常に早いので、密度の濃い、低い高さの大気中でも光を出すことができます。この窒素分子の発光は、バンド発光といって、青だけではなくピンクに近い色など、数多くの少しずつ違う色の輝線が発光します。

図1.4:オーロラの色と高さの関係

 以上のように、オーロラは降り込み電子のエネルギーによって色が違います。図1.4の写真に示すように、オーロラのカーテンの上の部分では赤、下の部分では緑になり、より激しいオーロラが出た場合は、カーテンの下の端が青やピンク色に輝きます。逆に言えば、オーロラの色を詳しく調べることによって、目では見えない宇宙空間からの降り込み電子のおおよそのエネルギーを知ることができます。オーロラの色の情報を使って、宇宙空間のプラズマである降り込み電子を研究することができるのです。

→末尾のQ/Aも参照して下さい。

1.5.オーロラを光らせる降り込み電子はどこから来るの?

 オーロラを光らせる降り込み電子は、宇宙空間からやってきます。宇宙空間では負(-)の電荷をもった電子や正(+)の電荷をもったイオンは、あわせて「プラズマ」、と呼ばれています。地球は磁石になっていますが、電気を帯びたプラズマは、磁石の力の線(磁力線)を横切っては動きにくく、磁力線に沿って動く、という性質を持っています。図1.5に示すように、地球の磁力線は、太陽からのプラズマの風(太陽風)によって吹き流され、太陽と反対方向に長い尾を引いています。この地球の磁石の力が及ぶ範囲を「磁気圏」と呼びます。磁気圏は、図5に示すように、太陽方向には地球半径の10倍くらいまで広がり、太さが地球半径の40倍くらい、後ろの方は地球半径の数百倍以上まで、彗星のように尾がのびています。この尾の部分の真ん中には、プラズマシートと呼ばれる熱いプラズマがつまっていて、このプラズマが磁力線に沿って地球の高緯度地方に降り注ぐことにより、オーロラが引き起こされるのです。
 太陽風のエネルギーはもともと1電子ボルト程度です。それがプラズマシートになると1000ー10000電子ボルトまで加速されます。どのようにプラズマシートのプラズマが加速・加熱されているのか、というのが、地球周辺の宇宙空間物理学の主要なテーマです。オーロラの動きは、この宇宙空間のプラズマの動きを投影して見せており、オーロラを詳しく調べることで、地球周りのプラズマの動きを知ることができるのです。

図1.5:オーロラを引き起こす降り込み電子の源-地球の磁気圏

 オーロラについてより詳しく知りたい方は、以下をご参照ください。

*参考書
 ・ヤマケイ情報箱「オーロラ 太陽からのメッセージ」 
              上出洋介著 山と渓谷社
   写真が多い一般向けの本。サイエンスのことも分かりやすく
   書いてあります。
 ・「オーロラ その謎と魅力」 赤祖父俊一著 岩波新書
   オーロラ研究の歴史的なことが書いてあります。

 大学院生向けには、
 ・物理学選書5「宇宙空間物理学」   大林辰蔵著     裳華房
 ・物理学選書6「超高層大気の物理学」 永田武・等松隆夫著 裳華房
   オーロラ・宇宙空間物理学の古典的教科書。1970年代に書かれ
   たのに、今でも生きています。一度絶版になったのを裳華房が復刊
   させたので、書店では手に入らず、直接問い合わせる必要があるで
   しょう。

* オーロラや宇宙空間物理学の研究者が集まる学会は、「地球電磁気・地球惑星圏学会」です。こちらのホームページにもオーロラ及び宇宙空間物理学の解説記事があります。詳しくはこちら:http://swdcft49.kugi.kyoto-u.ac.jp/sgeweb/kyoiku/index.html

* 東京大学理学系研究科地球惑星科学科のホームページには、オーロラ研究に関する大学生向けの資料があります。詳しくはこちら:http://stp-www.geoph.s.u-tokyo.ac.jp/index-j.html

2.低緯度オーロラの解説

2.1.低緯度オーロラってなに?

 オーロラは通常、アラスカ、カナダ、シベリア、スカンジナビア、グリーンランド、南極大陸など、高緯度地方で見られますが、「磁気嵐」と呼ばれる地磁気擾乱が激しく起きたときは、日本のような低緯度でも見られます。日本で見られるオーロラはそのほとんどが赤い色をしています。古くは、「赤気」と呼ばれ、日本書紀の推古天皇(620年)や天武天皇(682年)の時代から江戸時代に至るまで、京都や江戸などで北の空が赤く光る現象が報告されています。現代になってからも、北海道などで北の空が赤くなり、山火事と間違えられて消防車が出動したりしています。このような目に見えるオーロラが見える確率は、北海道付近では10年に1度くらい、とされていました。

図2.1:北海道母子里観測所で観測された低緯度オーロラ。1992年2月27日。

 名古屋大学太陽地球環境研究所では、1989年から北海道の母子里・陸別観測所で低緯度オーロラを観測してきました。特に1998年からは高感度の分光測光器や全天カメラを用いて観測を続けた結果、1998年から2004年の太陽活動極大期に、20回の低緯度オーロラを観測することに成功しました。この一連の高感度測光機器による観測から、低緯度オーロラは、目に見えない明るさのレベルでは、従来考えられているよりもずっと頻繁に現れていることがわかりました。

太陽地球環境研究所がこれまでに観測した低緯度オーロラのリスト

2.2.なぜ日本のような低緯度でもオーロラが見えるの?

 なぜ普段はアラスカやシベリアなどの高緯度で見られるオーロラが、日本のような低緯度までおりてくるのでしょうか? それには、磁気嵐、というプロセスが深く関わってきます。図2.2を見てください。磁気嵐は、太陽面でフレアやCME(Coronal Mass Ejection)と呼ばれる巨大な爆発が生じ、その爆風が強い太陽風として地球にぶつかった時に起きます。そのとき、太陽風中の磁力線の向きが地球の磁力線の向きと反対になっていると、太陽風から地球の磁気圏にエネルギーが流れ込みやすくなり、太陽と反対側のプラズマシートに高エネルギーのプラズマが溜まります。より多くのプラズマがプラズマシートに入ることによって、プラズマシートの内側(地球側)の境界は、より地球に近くなります。オーロラはプラズマシートの電子が磁力線に沿って地球の大気に降り注ぐことによって生じるので、プラズマシートが地球に近くなれば、オーロラはより低緯度で光るようになります。これが、磁気嵐が起こるとオーロラが低緯度まで広がるメカニズムです。

図2.2:通常時の磁気圏(上)と磁気嵐中の磁気圏(下)。磁気嵐中には、プラズマシートのプラズマがより地球の近くまで入ってくるので、オーロラが低緯度側に広がってくる。

 磁気嵐は、平均すると一ヶ月に1回くらい起き、一度起きると1-2日間続きます。太陽面で強い爆発がなくても、太陽風中の磁力線の向きが長時間、地球の磁場の向きと反対になれば磁気嵐が起きることもあります。しかし、やはり大きな磁気嵐は太陽面の爆発に関係しています。太陽は11年周期でその活動度が上がったり下がったりするので、大きな磁気嵐も太陽活動の極大期周辺の数年間に起きやすいのです。面白いことに、太陽活動の極大の年よりも、その1-2年前と1-2年後に大きな磁気嵐が起きることが知られています。また、磁気嵐は統計的に、3月と10月(春と秋)に良く起きることが知られていますが、これは地球の自転軸と磁軸の傾きの関係から、春と秋には地球の磁力線の向きが太陽の磁力線の向きと反対向きになりやすいため、と説明されています(Russell-McPherron効果)。

2.3.赤い低緯度オーロラはどうしてできるの?

日本で見られる赤い低緯度オーロラの発生メカニズムには、現在、次の2種類があると考えられます。1つはSARアーク(Stable Auroral Red arc)と呼ばれる1960年代から知られていた現象であり、もう一つはbroadband electronと呼ばれる1990年代に太陽地球環境研究所の研究によって見いだされた電子降り込み現象に伴うオーロラ発光です。どちらも、図2.3に示すように、磁気圏の中で、通常のオーロラ帯の電子の源よりも内側に存在し、プラズマシートの地球に近い部分に対応する、と考えられます。また、これらの赤いオーロラの他に、環電流の高エネルギーイオンが水素原子と衝突して電荷を失い、磁力線を離れて地球に降り注ぐことによって生じる、青い発光(窒素分子イオンや水素原子の発光)の低緯度オーロラがあることを、Tinsley et al.[1984]は指摘しています。

図2.3:低緯度オーロラを起こしている電子と、通常のオーロラ帯のオーロラを起こしている電子は、磁気圏内では内側と外側の関係になります。低緯度オーロラの源は、地球半径の2-4倍の場所に位置すると考えられます。

2.3.1.SARアーク

SARアークというのは、図2.4に示すように、主に磁気嵐の主相から回復相にかけて現れる現象で、プラズマ圏の低エネルギープラズマが、磁気嵐による環電流の高エネルギープラズマによりエネルギーをもらって加熱され、オーロラ帯の低緯度側に降り込んで来る現象です。プラズマ圏のプラズマのエネルギーは通常1電子ボルト程度、これが、環電流の高エネルギープラズマ(数万電子ボルト)によって数十電子ボルトまで加熱され、地球半径の3-4倍程度の位置から地球に降り込みます。数十電子ボルト、というのは、オーロラ電子としてはかなりエネルギーの低い方なので、SARアークはほとんど赤い光しか光っていません。宇宙空間から地球を見ると、磁気嵐によって広がったオーロラのドーナツの低緯度側に、張り付いたような形でSARアークが出ている、と想像されます。このエネルギー変換過程はゆっくりしているので、SARアークは通常、磁気嵐の主相から回復相にかけて、数時間から1日以上も長い間続きます。

図2.4:SARアークの発生メカニズム。地球の磁気圏を上から見た図。プラズマ圏の低エネルギープラズマが、環電流を構成する高エネルギープラズマによって暖められ、磁力線に沿って地球に降ってくる。プラズマ圏の位置は地球半径の4倍以内。環電流は地球半径の4-6倍程度の場所に位置する。磁気嵐中にはこれらの値がより小さく(地球に近く)なる。

2.3.2.Broadband Electrons

このSARアークに関しては古くからその存在が知られ、日本で見られる低緯度オーロラもこれが原因と考えられていました。しかし、1992年5月10日に名古屋大学太陽地球環境研究所が陸別で観測した低緯度オーロラに関して、これとは全く違う描像が見えてきました。このときは、非常に運の良いことに、オーロラが出ている時間帯に、磁力線で結ばれたオーロラの上空をDMSPというアメリカの人工衛星が通過しており、オーロラを光らせている降り込み電子を直接観測していました。その結果、このオーロラはこれまでのSARアークとは全く違うメカニズムで光っていることがわかってきました。
図2.5はそのときのDMSP衛星の降り込み電子データです。上のカラーパネルは低緯度オーロラが起こる1時間前、下がまさに低緯度オーロラが起こっている最中の降り込み電子を表しています。図の左が高緯度側(磁気緯度77-80度:磁気緯度は地磁気の極から測った緯度)、右が低緯度側(磁気緯度45度)で、12分間で衛星は緯度方向に移動しながら降り込み電子を観測しています。カラーパネルの縦軸はエネルギーで、一番下が30電子ボルト、一番上が3万電子ボルトです。色が青から赤、白になるにつれて、降り込んでくる電子の量が多くなります。低緯度オーロラが起こる前(上のパネル)に比べて、低緯度オーロラが起こっている最中(下のパネル)は、磁気緯度60度から50度の低緯度側において、すべてのエネルギーで急に降り込み電子の量が増えていることがわかります。これがbroadband electronと名付けられた現象で、その後の研究から、磁気嵐の主相付近で、サブストームと呼ばれる磁気圏特有の擾乱が発生したとき、それに伴って1時間くらい出現する現象であることがわかってきました。

図2.5:1992年5月10日に低緯度オーロラが北海道で観測されたときに、磁力線で結ばれた上空を飛行していたDMSP衛星によって観測されたオーロラ電子。上は低緯度オーロラが起こる1時間前、下は低緯度オーロラが起こっている最中。カラーパネルの縦軸はエネルギーで30電子ボルト(下)から3万電子ボルト(上)。衛星は左(高緯度)から右(低緯度)へ12分間で飛行している。オーロラ帯の低緯度側で、すべてのエネルギー範囲で電子降り込みが増大していることがわかる(broadband electron)。

1章のオーロラ解説を読まれた方はお気づきでしょうが、このような、30電子ボルトから3万電子ボルトにわたる激しい電子の降り込みがあった場合、オーロラは赤い色だけではなく、緑、青やピンクなど、さまざまな色で光ります。ではなぜ、この時北海道で見られたオーロラは赤色だったのでしょうか? その答えは、オーロラの高さと色の関係にあります。図2.6のように、北海道の磁気緯度は35度、図2.5で示したbroadband electronが降り込んでいるのは磁気緯度50-60度付近です。この電子降り込み領域の直下では、赤や緑、青、ピンクといったさまざまな色のオーロラが出ているわけですが、北海道から北の空を見ると、低い高さのオーロラは地平線の下に隠れて見えなくなってしまい、高い高さで光る波長630nmの赤い発光のみ、見える、というわけです。

図2.6:broadband electronに伴う低緯度オーロラ(左)とSARアーク(右)。broadband electronによるオーロラの場合、北海道からは北の地平線近くに見えるため、低い高さで光る緑や青は地平線の下に隠れて見えず、高い高さの赤い光のみが見える。SARアークは直下で見ても、赤しか光っていない。

 一方、図2.6の右の図に示したように、SARアークは、降り込んできている電子のエネルギーが数十電子ボルトと低いため、直下で見ても赤い光しか光っていません。broadband electronとSARアークの違いを確かめるためには、DMSPのような人工衛星がたまたま上空を通るか、あるいは、シベリアや樺太に行ってオーロラを観測しなければならないでしょう。もう一つの違いとしては、broadband electronはその継続時間が1時間程度と短いのに対して、SARアークは数時間から1日以上と長く見られます。
 broadband electronをつくる磁気圏のメカニズムはまだわかっていません。磁気嵐の主相に、磁気圏の地球に近いところで、電子の急激な加速・加熱が起こっていること、その内側・外側の境界が非常にはっきりしていること、などが、図2.5に示したDMSP衛星のデータからは想像できます。でもその加速・加熱メカニズムが何であるか、今後の研究が待たれます。

2.4.低緯度オーロラを観測する機械

図2.7:全天カメラです。先端についているのが魚眼レンズ。次に丸く見える部分に5枚のフィルターが入っていて、オーロラの色ごとに測ることができます。お尻についているのが、人間の目よりもはるかに感度が良い冷却CCDカメラ。右の図は、1999年5月13日にこの全天カメラで撮られた低緯度オーロラの画像(北海道陸別観測所)。魚眼レンズなので、空全体が丸く写っていて、真ん中が天頂、上が北、左が東、右が西、下が南になっています。波長630nmのオーロラの赤い光のみを通すフィルターで、露出2分45秒で撮影。光が強いほど、白くなるように表しています。北の方角全体で、赤いオーロラが光っています。小さい点は星、東側の空を南北にかけてのびているのは天の川です。

図2.8:掃天分光フォトメータです。入ってきた光を色ごとに2つに分けることによって、1台でオーロラの2つの色の光の強さを、同時に測ることができます。上の突起部分に鏡が入っていて、視野を南北に振ります。このフォトメータも、人間の目よりもはるかに感度が良いのです。右の図は、このフォトメータで観測された2000年4月7日の低緯度オーロラで、赤い光(波長630nm、酸素原子)の強さを表しています。北海道陸別観測所でのデータです。上から下まで5つのパネルがあるのは、一番上が南の地平線近く、真ん中が天頂付近、一番下が北の地平線近くの、それぞれ光の強さを表します。横軸は時間で、日没後から観測を開始し、明け方まで観測しています。観測開始から、北の地平線近くだけ赤い光の強さが非常に強く、明け方に向けてどんどん弱くなっています。これは、磁気嵐の回復相に現れたSARアークです。

図2.9:磁力計です。写真の左がアンプ、右がセンサーです。低緯度オーロラは磁気嵐にともなって現れるので、磁力計で観測される地磁気の変化は、低緯度オーロラの発生を予想するために重要な役割を果たします。右の図は、2001年11月24日に北海道陸別観測所において、この磁力計で観測された磁場変動(下の3つのパネル:下から北向き、東向き、下向きの地磁気の変動を表す)と、北の地平線近くを見ている分光測光器のデータ(上の3つのパネル)です。横軸は時間(右端から左端までで1日)で、グリニッジ標準時(日本時間―9時間)で表しています。6時頃から、急に磁場が大きく荒れ始め、磁気嵐が始まったことがわかります。上の3つのパネルは、上から青、緑、赤のそれぞれのオーロラの明るさを表しており、赤い光のみ、磁気嵐の最中に強くなって、赤いオーロラが陸別の北に現れていることがわかります。

図2.10:陸別観測所の屋上に、オーロラ観測機器を設置した様子です。左から、全天カメラ、掃天分光フォトメータ、北の地平線近くを見ている分光測光器、掃天分光フォトメータです。雪や雨を避けるために、これらの機械は木の箱の中に納められています。

参考資料

* 陸別での低緯度オーロラ観測は、陸別町銀河の森天文台のご協力で行われています。こちらのホームページでも、低緯度オーロラの写真を見ることができます。銀河の森天文台のホームページはこちら:http://www.town.rikubetsu.hokkaido.jp/tenmon/

* 歴史書にのこる低緯度オーロラの記録に関しては、詳しい解説がこちらのホームページにあります:http://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/1999/pdf/19990203.pdf

参考文献

この章で記述してきたことは、まだ新しいことなので、教科書にはあまり書いてありません。大学院生のためには、以下の学術論文が参考になるでしょう。

*SARアークに関する文献: 数多くありますが、例えば、
Rees, M. H., and S.-I. Akasofu, On the association between subvisual red arcs and the Dst(H) decrease, Planet. Space Sci., 11, 105-107, 1963.

Rees, M. H., and R. G. Roble, Observations and theory of the formation of stable auroral red arcs, Rev. Geophys. Space Phys., 201-242, 1975.

Kozyra, J. U., E. G. Shelley, R. H. Comfort, L. H. Brace, T. E. Cravens, and A. F. Nagy, The role of ring current O+ in the formation of stable auroral red arcs, J. Geophys. Res., 92, 7487-7502, 1987.

Okano, S., and J. S. Kim, Observations of a SAR-arc associated with an isolated magnetic substorm, Planet. Space Sci., 35, 475-482, 1987.

*broadband electron に関する文献は以下の3つです。
Shiokawa, K., K. Yumoto, C.-I. Meng, and G. Reeves, Broadband electrons observed by the DMSP satellites during storm-time substorms, Geophys. Res. Lett., 23, 2529-2532, 1996.

Shiokawa, K., C.-I. Meng, G. D. Reeves, F. J. Rich, and K. Yumoto, A multievent study of broadband electrons observed by the DMSP satellites and their relation to red aurora observed at midlatitude stations, J. Geophys. Res., 102, 14,237-14,253, 1997.

Shiokawa, K., R. R. Anderson, I. A. Daglis, W. J. Hughes, and J. R. Wygant, Simultaneous DMSP and CRRES observation of broadband electrons during a storm-time substorm on March 25, 1991, Phys. Chem. Earth, 24, 281-285, 1999.

*2.3章でちょっとふれた青い低緯度オーロラに関する文献はこれです。
Tinsley, B. A., R. P. Rohrbaugh, H. Rassoul, E. S. Barker, A. L. Cochran, W. D. Cochran, B. J. Wills, D. W. Wills, and D. Slater, Spectral characteristics of two types of low latitude aurorae, Geophys. Res. Lett., 11, 572-575, 1984.

*2.4章に出てくる観測機器について詳しく知りたい方は、以下の2つの文献を参照してください。
Shiokawa, K., Y. Katoh, M. Satoh, M. K. Ejiri, T. Ogawa, T. Nakamura, T. Tsuda, and R. H. Wiens, Development of optical mesosphere thermosphere imagers (OMTI), Earth Planets Space, 51, 887-896, 1999.

Shiokawa, K., Y. Katoh, M. Satoh, M. K. Ejiri, and T. Ogawa, Integrating-sphere calibration of all-sky cameras for nightglow measurements, Adv. Space Sci., 26, 1025-1028, 2000.

Q/A:ホームページに対して頂いた質問から

Q1:赤色のオーロラは100eVで光る とありますが、可視光のエネルギーは数eVだと思うのですが、それとの関係はどうなのでしょうか。

A1: 波長630nmの赤色の光の励起エネルギーは1.97eVですので、1.97eV以上のエネルギーを持つ電子が酸素原子と衝突すれば、ある確率で酸素原子を励起して赤く光らせることができます。しかし1.97eVの電子が衝突しただけでは、たかだか光子1個分の光しか出ることができません。実際のオーロラでは、もっとエネルギーの高い(数百eVから数千eV)の電子が降り込みます。こういった高エネルギーの電子は、大気の原子・分子と衝突し、その大気の原子・分子に含まれている電子を外にはじき出すことによって、「2次電子」と呼ばれる、エネルギーの低い電子を生成することができます。例えば100eVのエネルギーを持つ1個の電子は、5eVのエネルギーを持つ20個の2次電子を生成することができるわけです。この2次電子群が、より強いオーロラの光を作ることになります。

 大気の原子・分子はさまざまな成分、エネルギー状態を持つ可能性を持っています。宇宙空間から入射した粒子は、大気の原子・分子と衝突し、それらをいろいろなエネルギー状態にしたり、2次電子を放出させたりしながら、だんだんエネルギーを失っていきます。 電子がこういった衝突を起こす確率(衝突断面積)は、一般的にエネルギーが低いほど大きいので、粒子は高エネルギーの時は衝突しにくく、大気中でいったんエネルギーを失いはじめると、急速にその場所付近でエネルギーを他の大気の原子・分子に
与えて消えていきます。

Q2:Q1と関係しますが、緑色、青色の光を出す際にはもっと大きなエネルギーが必要なのはなぜですか。

A2:青色やピンク色は窒素分子イオンの光です。大気は、高さ100km以下では、地上と同じように窒素分子が80%を占める主成分ですが、それより上になると、酸素原子の方がだんだん多くなってきます。青色の光を出すためには、宇宙空間からやってきた高エネルギー電子は、より大気の深く(100km付近)まで入ってこなければならず、従ってエネルギーが大きくなければなりません。

 緑色は酸素原子の光です。酸素原子の密度は高さが100kmくらいでピークになり、それより上では密度が下がってくるので、keV以上の大きなエネルギーの電子が降り込んで、この高度付近まで到達するようになると、よく光ります。緑色の光を出す励起状態(O(1S)と書きます)と赤色の光を出す励起状態(O(1D))と書きます)では、同じエネルギーの電子が入ってきた場合、赤色の方が5倍くらい、励起される確率が高いです。従って、励起状態だけで考えれば、O(1D)の方が数多く励起されます。しかし、励起されてから光るまでの時間が、O(1S)では1秒、O(1D)では約110秒もかかるので、大気の密度が高くなる低い高度(150km付近以下)では、O(1D)は励起されても、光を出す前に他の分子・原子と衝突してエネルギーを失ってしまうのです。

Q3:原子が励起されてから発光するまでに時間がかかる場合があるのはなぜですか。

A3:これは地球物理学ではなく量子力学の問題ですね。励起状態のエネルギーが、どんな値でもとれるわけではなく、ある決まったとびとびのいくつかのエネルギーしかとれないこと、それぞれのエネルギー準位に電子が存在するかどうかを厳密に決めることはできなくて確率でしか表せないこと、ということが、
量子力学で言う不確定性原理の本質ですが、なぜ不確定性原理があるのか、ということは、この宇宙・世界がそうできている、としか説明されていないようにも思います。滞在時間の違い(すなわち存在確率の大きさの違い)に関しては、分子・原子の形、電気的な力の分布を考慮した量子力学の方程式を解くと理論的に求まるはずですが、残念ながら、塩川も完全には理解していません。

無断転載を禁じます。学校の教材や夏休みの宿題など、
教育目的には自由にご活用ください

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[HTML Format]:第二部-3- 大気と海の科学 第1章 大気の構造 目次 1. 大気の組成 2. 大気

[2011/12/09 13:20:11]: http://www.s-yamaga.jp/nanimono/taikitoumi/taikinokouzo.htm

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第二部-3- 大気と海の科学

第1章 大気の構造

目次
1. 大気の組成
2. 大気の構造
a. 対流圏
b. 成層圏
c. 中間圏
d. 熱圏
用語と補足説明
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1.大気の組成

 惑星・天体がそのまわりに保持している気体を大気という。とくに地球の大気は、高さ80km程度まではほぼ同じ組成をしている。その組成をもった気体を空気という。空気は下の表のように、さまざまな種類の気体が混じった気体である。15℃、1気圧(1013hPa)のときの密度は1.2250kg・m-3である。

気体 記号 割合(体積%) 気体 記号 割合(体積%)
窒素 N2 78.08 二酸化炭素 CO2 0.035
酸素 O2 20.95 その他(※)   0.01
アルゴン Ar 0.93      
※ その他としては、ネオン(Ne)、 ヘリウム(He)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、メタン(CH4)など。

 実際の空気は上の表に加え、水蒸気を0.1%~0.2%、多いときには2%程度含んでいる。ふつうは水上をのぞいた乾燥大気で考える。窒素、酸素、アルゴンの3種類だけで99.9%になる。

 大気の上空ではこの組成は少し変わる。一般的には高いところでは軽い元素の割合が多くなる。また、オゾン(O3)、原子酸素(O)、原子窒素(N)などは、濃度が高くなっている高さがある。また二酸化炭素(CO2)の濃度は年々高くなっている。この件についてはこちらを参照。

 大気の密度は高さとともに小さくなって宇宙空間につながっているので、ここが大気の上限という明瞭な境界面はない。

2.大気の構造

 地球の大気の温度は高さと共に変化している。そこで、高さとともにどのように気温が変化しているかで、4つの層に分けられる。

理科年表CD-ROM2004(丸善)
a.対流圏

 大気の一番下層部で、高さとともに気温が下がっている層。その上が成層圏。対流圏と成層圏の境界を(対流)圏界面、あるいは対流止面という。圏界面の高さは地表の温度が高いほど高く、地表の温度が低いと低い。だから圏界面の高さは赤道部で17km程度、両極で10km程度、中緯度では季節により変動するが10数km程度である。

 対流圏の高さによる気温の下がり方を気温減率といい、その割合は平均するとおよそ0.6℃/100mである。つまり、地表の気温が20℃だと、その上空1000mでの気温は14℃、2000m上空では8℃程度になっていることが多い。気温の下がり方についてはこちらも参照。また、上空ほど気温が低い原因と、気温が低いのにその空気が下降してこない理由はこちらを参照。

 何らかの原因で地表付近にまわりよりも暖められた空気の塊ができると、その空気塊の密度はまわりよりも小さくなるので上昇を始める。上昇した空気塊は断熱膨張することによって気温が下がり、また上空で熱を放射して冷えたり、また含んでいた水蒸気が凝結することによって気温が下がり、冷えた空気塊は下降する。こうして対流圏の空気ではその名の通り対流が生ずる。また、対流に伴って風が吹いたり、雲ができたり、雨が降ったりという気象現象が起こる。つまり、つまり対流圏とは日常でおなじみの気象の変化が生じているところである。

 地表付近から上昇した空気は圏界面以上には昇ることができない。積乱雲が発達する所を見ていると、あっという間に背が高く成長する積乱雲もある高さで頭打ちとなり、最上部では雲が横に流れ出していわゆるかなとこ雲となる。かなとこ雲の上の平らなところが圏界面ということになる。これについてはこちらも参照。

 対流圏には地球の大気の全質量の約75%、また水蒸気のほとんどが含まれている。

b.成層圏

 対流圏の上の成層圏の最下部はほぼ気温が一定であるが、高さ20kmから高さ50km程度では高さとともに気温が上がっている。これはこの付近に存在するオゾンが太陽からの紫外線を吸収しているためである。このオゾンが生物にとっては有害で危険な紫外線、とくにDNAを破壊する波長250nm~270nmの紫外線を効率的に吸収するという重要な役割を果たしている。ただし、オゾンが多いといっても、地表付近の密度で換算するとその厚さはわずか3mm程度でしかない。

 海など地表で発生した水蒸気は圏界面以上には昇ってこない。また対流圏と違って上空ほど気温が高いので対流も生じにくく、これに伴う気象の変化がない。詰まり安定しているので、長距離を飛行する大型ジェット機はこの成層圏(の最下部)を飛行している。

 中緯度の圏界面付近では強い西風が吹いていて、これをジェット気流という。ジェット気流についてはこちらも参照。

 成層圏には大気の全質量の約17%が含まれている。だから、対流圏と成層圏で92%の大気が含まれることになる。

c.中間圏

 成層圏の上、高さ50km(気温は約0℃)からは再び高さとともに気温が下がり、高さ80kmでは気温は約-80℃~-90℃になっている。この間を中間圏という。

 中間圏の大気の密度は地表付近の大気の1万分の1程度でしかない。しかし、この密度でも地球に飛び込んでくるいん石にとっては大きな密度で、大気との摩擦熱で発光する。また高緯度では、宇宙から飛び込んでくる細かい粒子(宇宙塵)のまわりに氷が付着して、横から太陽光を受けると光って見える夜光雲が見られることもある。

 中間圏までの大気組成はほぼ同じで、この組成を持つ大気(気体)を空気という。だから、空気の上限は高さ80kmということになる。

d.熱圏

 高さ80km以上からはまた高さとともに気温が上昇し、高さ400km以上では1000℃にもなっている。中間圏よりも上を熱圏という。

 熱圏では大気の密度は大変に小さく、高さ450kmで地表の1兆分の1、高さ800kmでは100兆分の1でしかない。このように密度が小さいので、気温が高いといってもエネルギーは小さいので、熱をしては感じられないだろう。だから、高さ300km程度を飛んでいるスペースシャトルそのものや、あるいはスペースシャトルから外に出て船外活動をしても平気なわけである。つまり、気温は大気を構成している原子・分子の速さで決まり、熱圏では猛烈な速さで原子・分子が動き回っているが、その数が少ないのでエネルギー的には小さいわけである。

 熱圏になると、大気の組成は空気の組成とは異なってきて、分子よりも原子(窒素原子や酸素原子)の形で存在する。この原子が太陽の紫外線やX線を吸収して高温になっている。また、紫外線を吸収することによって、原子は電離して(イオン化して)、電子とプラスのイオンになっている。この電子やプラスのイオンの密度が高い部分を電離圏(電離層)という。

 オーロラは熱圏の最下部(高度90km~130km)で、大気の原子に太陽から飛び出した荷電粒子(水素原子核(陽子)や電子)が衝突して発光する現象である。

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用語と補足説明

大気の上限:どこが大気の上限かは難しく、考え方次第ともいえる。ここでは、大気の運動の速さ(10km・s-1)が、地球からの脱出速度(11.2km・s-1)に近くなる高さ1000km程度を大気の上限としておく。少なくとも、スペースシャトルが飛んでいる高さでは、真の宇宙空間とはいえないであろう。

成層圏のオゾン:オゾンは下のようにして発生する。

 O2+紫外線 → O+O
 O+O+M  → O2+M (Mは触媒)
 O2+O+M → O3+M
 O+O3 → 2O2

オゾン層の破壊:オゾン層の破壊についてはこちらを参照。

オーロラ:太陽から飛び出した荷電粒子(プラズマ)の流れ(太陽風)は、大部分が地球の磁場がつくるシールド(または下の図)によって地球をそれている(荷電粒子は磁力線を横切りにくい)。しかし一部は地球の背後に延びる磁気圏の中央部(プラズマシートと呼ばれる部分)にたまり、そこから地球磁場の磁力線に沿って、地球の磁極をめがけてらせんを描きながら飛び込んでくる。この荷電粒子が大気の原子と衝突して発光するのがオーロラである。酸素原子は赤や緑の色を出し、窒素原子は青い色を出す。オーロラは地磁気の極のまわりのドーナツ状の地域でよく見られるので、これをオーロラ帯という。オーロラが輝いているときに、地球も外から眺めることができるとしたら、木星や土星と同じように、極を取り巻くドーナツ状のオーロラが見えるはずである。地上で見ると、そのごく一部分しか見えないので、カーテン状に見えたりする。

 磁場のシールドくぐり抜けた太陽からの荷電粒子の一部は地球の赤道上空にたまっていて、それをバンアレン帯という。

 オーロラは太陽の活動が活発なときほどよく見られる。太陽の活動の周期は11年である。だから、オーロラは11年ごとによく見られることになる。太陽の活動が活発だとオーロラ帯が広がり、日本でも見られることがある。記録では江戸時代に長崎でも見えたという。日本のような場所で見られるオーロラを低緯度オーロラという。低緯度オーロラは北の空がぼーっと淡く赤くなる程度なので、夜が暗くなるところでないと見えない。なお、低緯度オーロラについては国立天文台天文ニュース680号(2003年10月30日、2006年2月19日リンク確認できず)を参照。

ノルウェーのトロムソで撮影されたオーロラ:名古屋大学太陽地球環境研究所電磁気圏環境部門
http://www.stelab.nagoya-u.ac.jp/%7eeiscat/
 

バンアレン帯:地球の赤道上空に、荷電粒子が地球の磁場にとらえられてたまっている場所があり、発見者の名を取ってそれをバンアレン帯という。荷電粒子(おもに電子と陽子、一部ヘリウムの原子核)は放射線の実体でもあるので、ここは高放射能帯である。バンアレン帯は二重になっていて、内側のバンアレン帯には陽子が、外側のバンアレン帯には電子が多い。1958年アメリカが最初に打ち上げた人工衛星エクスプローラー1号のデータを解析したバン・アレン博士が発見した。この荷電粒子の起源は太陽ばかりではなく、遠くの宇宙からのものも含まれると考えられている。

 スペースシャトルなどはこの下を飛んでいるが、月に行くときはここを横切らなくてはならない。本当は北極や南極の上空から宇宙に出て行けばいいのだろうが、ロケットを打ち上げるときはできるだけ地球の自転の勢いも利用したい、つまり低緯度で打ち上げた方がいい。すると、必然的にバンアレン帯を通過せざるを得なくなる。これまで、ここを通過した宇宙飛行士はアポロ計画の8号~17号、1回に3名の宇宙飛行士が乗り込んでいるので延べ30人ということになる。即死するほどのものではないということは確認できた。

日本惑星協会
http://www.planetary.or.jp/earth.html

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このページの参考となるサイト

オーロラの解説:名古屋大学太陽地球環境研究所の塩川和夫氏のページ http://stdb2.stelab.nagoya-u.ac.jp/member/shiokawa/aurora_kaisetu.htm


[HTML Format]:バッキーペーパー バッキーペーパー (英語: Buckypaper) は、カーボンナノチューブ

[2011/12/09 13:03:02]: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BC

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    バッキーペーパー

    バッキーペーパー (英語: Buckypaper) は、カーボンナノチューブの結合体による薄膜状の物質の総称である。名称は「バッキー・ボール」とも呼ばれるフラーレンと同様にバックミンスター・フラー に由来する。
    目次 [非表示]
    1 概要
    2 特性
    3 脚注
    4 関連項目
    5 外部リンク
    概要 [編集]

    20世紀の段階では粉末状のカーボンナノチューブを製作するのが限界であったが、21世紀に入りカーボンナノチューブを紡糸、薄膜、固体状に形成する事が可能となった。そのため軌道エレベータへの利用も含め航空宇宙産業を始め、エレクトロニクスなどへの応用が期待されている。カーボンナノチューブを薄膜状に形成するためには触媒や炭素材料などの雰囲気中に基盤を入れて高温にするCVD法が生産効率が高い。この手法は基盤上にナノチューブ繊維を生やすイメージに近い。日本の産業技術総合研究所(AIST)ではスーパーグロースCVD法による高品質SWNT(単層カーボンナノチューブ)、MWNT膜の形成に成功している。[1] 触媒操作によりSWNTとMWNTの比率は変わる。[2]特にAISTによって形成された二層カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブの持つ高導電性、柔軟性と、多層カーボンナノチューブの持つ電気的、熱的安定性を併せ持つ。そのため、次世代のナノデバイス材料として大きな注目を集めており、ナノテクノロジーの中核となる基盤材料の一つとして期待されている。[3]
    特性 [編集]

    カーボンナノチューブから構成されるため、高機械強度・軽量・高電流密度耐性・高熱伝導特性などの性質を持つ。
    将来的に鋼鉄の500倍強く、軽さは10倍になると期待、推測されている。フロリダ州立大学の研究チームが試作した複合素材では、最も強力な複合素材であるIM7(引っ張り強度5~6000MPa)の半分の強度、つまり鋼鉄の15倍程度の強度を持つ素材を開発したとされる[4]。
    SWNTはヤング率が大きく、半導体や電気伝導体を含む特性がある。これに対しMWNTは引張強度が大きい。日本の産業技術総合研究所が開発したSWNT膜は高さ2.5ミリメートルの構造体をわずか10分で形成するスーパーグロースCVD法を用いて炭素純度99.98%以上、重量密度0.037g/cm3高比表面積(非開口状態で1000m2/g、開口状態で2000m2/g)を誇る。[5]
    スーパーグロースCVD法を用いて基盤上のナノチューブの厚さや密度を調整する事によりカーボンナノチューブ黒体を形成する事ができる。このシートは現在確認されている世界で最も黒い物質である。
    脚注 [編集]

    ^ K. Hata, D.N.Futaba et al. (2004). “Water-Assisted Highly Efficient Synthesis of Impurity-Free Single-Walled Carbon Nanotubes”. Science 306: 1362-1364. doi:10.1126/science.1104962.
    ^ K.Hata “From Highly Efficient Impurity-Free CNT Synthesis to DWNT forests, CNTsolids and Super-Capacitors”
    ^ ディスプレイに応用可能なカーボンナノチューブを開発
    ^ WIRED.jp「鋼鉄より500倍強く10倍軽量な素材「バッキーペーパー」」2008年10月21日
    ^ スーパーグロース法によるカーボンナノチューブの特性
    関連項目 [編集]

    カーボンナノチューブ
    カーボンナノチューブ黒体
    フラーレン
    軌道エレベータ
    外部リンク [編集]

    産業技術総合研究所、ナノテクノロジー・材料・製造分野
    産業技術総合研究所 単層カーボンナノチューブの安価な大量合成法を開発
    産業技術総合研究所 単層カーボンナノチューブで高強度繊維の紡糸に成功